株式会社長手長栄堂は、淡路島の特産品を素材として菓子作りを行っている昭和5年創業の老舗だ。兵庫県中小企業団体中央会(中央会)の支援をいかに利用されているのか、代表取締役の長手氏に話を伺った。
中央会との付き合いが始まったのは2012年の年末から。鳴門オレンジを使ったヒット商品「あわじオレンジスティック」の姉妹品として、地元平岡農園が無農薬で育てたレモンの皮を使い、何か新しい商品を作ろうという話が出ていたときだった。農業改良普及センターに紹介され、「ひょうご農商工連携ファンド事業助成金」申請に向け中央会のサポートを受けることに。「専門家派遣事業」を利用し、申請書類の作成などのアドバイスを受け、助成金を得ることとなった。
そうして本格的に商品開発が始まった。同じかんきつ類とはいえ、鳴門オレンジとレモンとではまったく違う。素材の味を生かすために様々な試みが行われた。
商品開発はお手の物だが、事業実施には経過や実績の報告義務がともなう。期限もある。慣れない手順は中央会に相談する。定期的に訪問してくれるのが心強い。
製造工程も課題の一つだ。素材が自然のものであるため味も形も不揃いであること、素材を見せるためチョコを全掛けしないことから、製造はすべて手作業で行われる。あわじオレンジスティックがマスコミで取り上げられ製造が追いつかなくなった経験もあり、機械化も視野に入れる必要がありそうだ。
それなら「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」が合うかもしれない…とインタビュー中にもアドバイスが飛ぶ。中小企業の設備投資等を促進するための補助金だ。
パッケージデザインも決まり、発売の日も近い。だが、「まだまだ途中」と長手氏。できあがってもなお試行錯誤の連続だという。すでに売れている商品でさえ年ごとに改良を加え続けている。商品は爆発的に売れなくてもよい。地元の人々が買ってくれて、じわじわ広がる感じがよい。
中央会のマッチングにより人気ステーキレストランとのコラボも実現。皮をオレンジスティックに使用する鳴門オレンジの果実部分が、ドレッシングやポン酢として製品化された。
「中小企業の立場に立って有益な情報を紹介してくれるのがありがたい」と長手氏。地元特産品を活かそうとがんばっている同社へ、中央会香川から「おいしいものを作ってほしいし、おいしいものが売れてほしい」とエール。まだまだアシストは続く。