播州織工業協同組合は、織布業者の出資により、播州織の主に加工を目的として設立された。工場で織りあがった時点では、布地はまだ商品としての品質等が整っていない。組合では、これを集めて加工を施し、用途に応じた特性、機能、風合を付加し、商品価値を高める整理加工を行っている。
兵庫県中小企業団体中央会(中央会)の支援をいかに利用されているのか、常務理事の大久保氏、工場長の松田氏に話を伺った。
北播磨地域において長い歴史をもつ播州織は、先染め綿織物国内生産トップシェアを誇り、昭和時代には海外へ向けての輸出も盛んだった。ところが、プラザ合意による為替政策のために輸出が激減し、安い海外製品の輸入が増加。産地始まって以来の苦境と言われている中、生き残りをかけ新製品の開発に取り組んでいる。
機能性生地の開発に当たっては、加工薬剤や機械などの高度な知識が必要となる。中央会に相談し、「活路開拓事業」の支援を受けて新しい生産加工方法の確立に成功した。「ミラクルコットン®」は、汗染み防止加工が秀逸だ。肌に触れる面は通常の生地で汗を吸うが、表面は特殊な加工が施されており汗がほとんど見えない。まもなくシャツとして売り出される予定だ。また、これまでに開発した「エココンフォート®」は、綿織物でありながら透湿性、通気性、耐水性、防風性、撥水性を併せ持つ素材で、外部からの水性物質をガードしつつ内部からの汗や水蒸気を外部へ通気する。環境にやさしい水系樹脂を利用しているのも特徴だ。
風合いに特徴のある生地も開発している。「クラッシュ加工」は立体感ある独特の風合いの加工方法で、数々の賞を受けた。約半世紀ぶりに復活させた「播州やたら」は、緯糸に残糸を利用するため、同じパターンが繰り返される一般の播州織とは違い、模様の再現性がないのが特徴。これらの生地を利用し、帽子や財布、鞄などへの製品化も行っている。
播州織の生産は、染色業者、織布業者、整理加工業者などの分業で行われ、問屋、メーカーへと送られる。テキスタイルを仕上げる最終段階を総括する組合は、播州織の地位向上、ブランド化を推進する役目を担わなければならないと考えている。まずは兵庫県下のメーカーなどとコラボし、地域ブランドを立ち上げ、商品を世に出したい。中央会のネットワークやアドバイスを活用し、販路拡大を図りたい。
中央会の紹介により、大手雑貨店との個別の商談にもチャレンジした。また、中央会と(独法)中小企業基盤整備機構が主催する「ものづくりキャラバン展示会 in 東リ-2」にも参加。多方面から播州織の可能性拡大を模索している。
産地へ、地域へ、そして兵庫県へ貢献するために、来季に向けてブランド化の構想が膨らむ。