足立織物株式会社は、ハンカチやタオルなどのギフト商品や、特許を持つ真空パッキング技術を使ってコンパクトサイズに圧縮したタオルや毛布などを製造、販売している。兵庫県中小企業団体中央会(中央会)の支援をいかに利用されているのか、代表取締役の足立氏、娘さんで企画担当の有希さん、広報担当の美由希さんに話を伺った。
中央会を知ったのは2012年のこと。兵庫県信用組合から「専門家派遣事業」を紹介されたのがきっかけだった。二人の後継者を得て、会社のこれからの道筋づくりが始まっていた。外部からの支援を受け、いろんな意見を聞き、新しいことを取り入れたい、経営方針や営業方針も見直したい、と考えていた。
中央会の誘いで「国際フロンティアメッセ2013」にグループ出展。事前プレゼン会や出展者同士の交流会にも参加した。展示会出展は初めてのことでもあり、人前に出て話をする機会や他企業の経営者と親しく接する機会を得て、若い後継者にはとても良い経験と刺激になった。
中央会のイベントや大会に参加することで、周辺地域だけでなく兵庫県全域に活動の場が広がった。中央会職員や異業種の企業とも親しくなれた。仲間ができた。二人の活動を見守る足立氏は「若い人、女性でも、経験を積めば皆をひっぱる経営者となれる」と確信したと言う。経験値が少ない若くてフレッシュな二人だからこそ、声をかけてもらい、より支援を受けやすかったのではないかとも振り返る。これからもこの縁を深めていきたい。
2013年は「チャレンジ」そして「チェンジ」の一年となった。特許の真空パッキング技術を利用して開発した非常用圧縮毛布「EB-21」は、災害時に目立ちやすい色とコンパクトさが売りの商品だ。東北大震災の際、お客さんから届いた意見をもとに自社の技術を活かして生まれた。二人も商品開発に携わった肝いりの逸品だ。防災グッズとしてしまいこむのではなく、本棚やキャビネットなど身近なところに置いてほしいという願いから百科事典サイズの箱入りの形状としている。ギフト商品一筋だった同社には、防災関連の商品を売るルートがなかったが、ここでも若い後継者のアイデアと行動力が発揮される。体当たりで神戸の老舗書店に営業をかけ、なんと本棚に並ぶことになった。フロンティアメッセ出展も契機となり、機能性とアイデアが注目された同商品は、様々なメディアでも取り上げられるようになった。
そうして、経済産業省により、革新的な製品開発、サービスの創造や地域貢献・地域経済の活性化に取り組んでいる企業として「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選定された。また、中央会主催の第55回中小企業団体兵庫県大会において「しっかいや大賞」を受賞し、中央会会長に表彰された。
防災商品を扱うようになって、お客さんと直に接する機会が増えた。生の声が聞け、商品に反映することができる。社会貢献できることも誇りだ。
売って普及させてこそ中央会や仲間から受けた支援への恩返しになると考えている。後継者を得てこれからの展開が楽しみな同社は、新しい分野でのチャレンジを続けるのはもちろん、創業の基本に立ち返り、地元の播州織の普及にも貢献していきたいと考えている。そのためにも中央会には、都市と地方をつなぐパイプ役として支援のさらなる発信を願っている。