株式会社喜市は、「ALL MADE IN JAPAN」をコンセプトに革小物を企画、製造、販売する新進のメーカーだ。兵庫県中小企業団体中央会(中央会)の支援をいかに利用されているのか、代表取締役の片山氏に話を伺った。
片山氏の生家は元町商店街の6丁目にて歴史ある靴店を営んでいる。商店街を遊び場に育った氏は、人通りも減り空き店舗の目立つアーケード街を活性化したいと考えていた。
店舗を誘致するにもお客さんと売り上げがあってこそ。自分でやってみないと商店街の魅力を人には伝えられない。そこで、実験を兼ねて自ら空店舗にショップ兼工房をオープンさせてしまった。家業柄、革に親しみがあり腕に覚えもある。実家が靴なら小物でいこうと同じ6丁目に構えた店でひとりコツコツと作り始めた。
大型雑貨店のバイヤーから声がかかり取り扱いが始まると、百貨店の催事やカタログ通販の話も来た。神戸セレクションにも選ばれるようになった。順調に売り上げは伸び、ひとりでは回らなくなり従業員を雇うことに。
多忙の中、自社の経営課題に向かい合う機会が減ってきたことに気づいた。そんなとき中央会尾﨑から声がかかる。中央会会員である元町6丁目商店街振興組合で理事長を務める父とは旧知の間柄だった。3年以内に9割の企業が廃業すると言われる創業期を乗り越え、5年目を迎える今が次の山場であると教えられた。
中央会支援の下、中小企業庁のミラサポ事業なども活用し、平成25年度に「経営革新計画」の承認を県から得た。突っ走ってきた経営を、いったん立ち止まって整理し、事業計画を練ることができてとてもよい経験になったと振り返る。
ものづくりの分野で同じ道を歩いている企業に「経営革新計画」申請についても教えてあげたい。これも自分が経験したからこそ勧められる。
革業界で仕事をするうち、売り手、デザイナー、作り手の情報交換ができておらず、せっかくの技術や顧客の声が製品に生かされていない例をたくさん見た。ここをつないだものづくりをしたいと考えている。兵庫県の地場産業を盛り上げたい気持ちもある。なめし業者や鞄メーカーなどを巻き込むつもりだ。
また、クリエーターの集まる、そうして彼ら目当てにおしゃれな客の集まる、そんな商店街にしたいと代表を務める「神戸クラフツアーケード」を立ち上げた。元町6丁目商店街他を舞台にクリエーターがハンドメイドの小物やアクセサリーを展示販売するイベントだ。臨時店舗の出店から、商店街への入居に興味をもってくれる店が出てくるとうれしい。
職人や技能者が手間をかけて生み出す素材や製品の良さが見直されている。中央会の産地組合等とのネットワークを利用して播州織などの地場産業とコラボできないかも模索中だ。次々と夢が広がってますます忙しくなりそうだ。