人生100年時代を迎え、生き方、働き方を考える人は多い。でも、何かやりたいと思っていても、一体どれだけの人が実現できるのだろう。温め続けた夢をかなえた人が居る。今年1月にオープンしたばかりのカフェキッチン「リボン」のオーナー阪本さんにお話を伺った。
阪急電車を降りるとすぐ見えるお店は、とても入りやすい印象だ。明るい店内にはあちこちに絵本が飾られ、優しいタッチで手書きされたPOPやメニューが並ぶ。一人でパソコンを開いている人、おしゃべりに興じる人、食事をする人。お客さんそれぞれが、思い思いに寛いでいる。
長年フルタイムの仕事と主婦を両立してきた。やりがいのある好きな仕事だったが、退職後の人生のこと、まだ実現していない夢のこと…友人と集まるとそんな話が出る年代になっていた。好きなものに囲まれて人が集まる場所を作りたい。得意な料理を活かしてお店を開きたい。定年したら実現できるだろうか。それからでは遅いのではないだろうか。
そんな思いが募り、気力体力の充実している今、少しでも早く実行したほうが良いと決断。まずは働きながらできることを考えた。一家の主婦でもあり、勤務のある日は時間が取れない。休日を利用してのセミナー参加やカフェ巡り、料理の腕磨きを始めた。職場に迷惑はかけられない。責任ある立場にあったため、心に決めたときから少しずつ、無理のないように、でも着実に仕事の引き継ぎも進めていった。
そんなときに、インターネットで中央会開催の「飲食業開業セミナー」を見つけた。すぐに参加を決めた。飲食業開業に絞り込んだセミナーでは、具体的な情報が得られ、同じ目的を持った仲間との出会いが、さらに気持ちを強くさせた。
3月末で円満退職してからは、晴れて物件探しを始めた。今のお店に出会うまで、30件以上もの物件を見て回ったという。その傍らで、中央会から、元町にあるシェアキッチン「ヒトトバ」を紹介された。キッチンを借りてお店のシミュレーションができる!何もかも一からの飲食業。場所と設備を借りて週3回、3か月間の練習期間をもった。
店舗が見つかると、次は開業に向けてのいろいろな手続きが待っていた。飲食店開業セミナーで習ったことが役に立った。店舗も自分のイメージに合わせて全面改装し、小物もひとつひとつ揃え、ついに開店に漕ぎつけた。
目的を見失うことなく、強い意志をもって開店までを実現した。でも、継続することの方がより困難であり、大切だと考えている。
集めた絵本は数百冊にもなるという。絵本をテーマに、季節の食材を使ったメニューなども提供している。季節行事にまつわるメニューが登場することも。それを地域の人にも楽しんでもらいたい。高齢化の進む地域でもあり、お年寄りも気軽に立ち寄れる場所でありたい。
いつも何かテーマをもって店の雰囲気づくりをしていきたい。絵本だけでなく、趣味の旅行やトレッキングをテーマにする日があっても面白い。趣味を持って楽しんでいる人の発表の場ともなりたい。コンサートやワークショップなどを開催すれば、夢の実現を手助けすることもできるだろう。ここに来れば、何かのヒントやきっかけになったり、楽しめたり、人と出会えたりできる。そんな場所にしたい。
そうお話ししてくださる阪本さんの目は、きらきらと輝いていて、またお店に寄ってみたいと思わずにはいられなかった。
中央会は、個人の夢の実現も応援しています。