顔見知りの店主が居て、気軽に訪ねることができる。電球などの消耗品からテレビや冷蔵庫、洗濯機などの大型家電に至るまで、相談に乗ってもらいながら求めることができる。アンテナの調子が悪かったり、洗濯機が変な音をたてたりしたとき、電話一本で駆け付けてくれる。
兵庫・阪神家電設備事業協同組合は、そんな町の電器屋さん31店舗が集まって設立された。愛称は「ひょうはん」。設立前から近隣の同系列電器店で協力し合うグループが自然発生的に存在していた。西は姫路から、東は大阪市内までのグループを統合し、地域に密着したネットワークを活かし、知恵と力を集結すべく、広い範囲を網羅する組合が誕生することとなった。理事長の柏原さんにお話を伺った。
大手家電量販店、テレビショッピング、インターネットショッピングなどでの購入が主流となった今、町の電器屋としての生き残りを賭け、活発に情報交換が行われている。神戸、姫路、大阪を中心とした3地区に支部分けされ、毎月各支部から2名ずつの代表が集まり役員会を開く。役員会では、月ごとの施策や長期のイベントなどについてアイデアを出し合い、各支部へ持ち帰る。各支部でもそれを受けて毎月の話し合いの場が持たれる。
10~20代はスマホでインターネット、子供の小さな30~40代は家族レジャーも兼ねて量販店、50~60代は親しみやすいテレビショッピングを利用することが多いとされる。では、それ以上の世代はどうか。これまでも町の電器店を利用してきてくれたお年寄り層こそが、電器店のお客様のターゲットだ。高齢化に伴い、客層も広くなっている。取り付けや使用法の説明など電器店の得意とするきめ細やかなサービスが求められている。
新興住宅地では若年層の住人が多くなっている。こうした若い世代の獲得も急務である。まずは店に入ってもらいたい。敷居を低くするためには何ができるのか?地域の人々に楽しんでもらえる、そして役に立つことができるイベントやキャンペーンなどを積極的に展開していきたい。
組合設立からの付き合いの中央会 東は、役員会などにも積極的に参加し、組合に寄り添うことで、課題解決に的確に対応してくれる頼もしい存在だ。
研修会事業で講師を紹介してもらい、勉強会を開いた。店のイメージ戦略づくりに役立つ情報がもたらされ、組合員に好評を得た。まずは入りやすい店を作り、居心地をよくして滞在時間を増やす。まったく違う業種ながら、成功事例を交えて繰り出されるマーケティング理論から多くを学んだ。今後も引き続き勉強会を開きたいと希望している。
中央会支援事業を利用し、職業訓練校でスキルを身につけたい生徒と協力し合い、念願のホームページもできた。組合のホームページができると、各店舗の意識も変わり、全店がホームページを持つようになった。アクセスの多い店では、問い合わせも来るようになった。地域の人に「ひょうはん」という名前をもっと知ってもらいたい。これからはSNSなどの活用も考えたい。
時代の例に漏れず、この業界でも事業承継が課題となっている。跡継ぎのない電器店が閉店してしまうのは、その地域の損失だと言い切る。かつてはどの町にもあった親しみやすい電器屋さんがなくなってしまうのを食い止めたい。
家電難民を出さないことを掲げ、全31店舗の顧客情報をデータベース化することで、組合として取り組んでいる。後継者のない店があれば、近くの店舗や必要とされるサービスを提供できる別の店舗が協力できるような仕組みづくりも進めている。電器店を開業したい人へも広く門戸を開き、サポートしている。