株式会社スイカンは、「蛇口をひねると当たり前のように綺麗な水が出る」生活を守るため、24時間体制で地域の水に関する設備を支える水環境のエキスパートだ。このたび、中央会の支援でBCP策定に取り組まれた。どんなご苦労があったのだろうか。代表取締役の松本雅稔さんと、総務部課長の森口冬樹さんにお話を聞いた。
BCPとは、事業継続計画(Business Continuity Plan)の頭文字をとった略語で、企業が自然災害、感染、テロ、システム障害、サイバー攻撃などの緊急事態に遭遇したときに、損害を最小限に食い止めつつ、事業を継続するための手順や方法などを取り決めた計画書のことをいう。
兵庫県中小企業青年中央会(青年中央会)では、事業継続アドバイザーとして全国で活躍する佐藤雅信さん(事継舎代表)のオンラインセミナーを企画した。以前より青年中央会に所属して活動をされていた松本さんが、このオンラインセミナーに参加し、感銘を受けたことから自社で行うことを決心された。
さっそく中央会の実施する「BCP策定支援事業」に申込み、専門家派遣で件の佐藤さんの指導を受けられることになった。全3回に、希望して1回追加した全4回の派遣で、7か月かけて計画書を策定する。
BCPの策定は、社員全員の協力無くしては成し得ない。まずは、部署ごとの部門長クラスを集めて、1回目は、セミナー形式で、BCPは何故必要なのか、どのような手順で作成するのかについての説明が行なわれた。早速、業務全体の棚卸しともいえる、洗い出し作業が始まった。
2回目からは、実際にBCPを作る作業に入る。
それに先立って業務を全部書き出す作業は、たいへん地道な作業だ。日々の仕事に追われていると、業務の棚卸しをする機会など、そうあるものではない。だが、この緊急時の計画書を作る過程で、実は平時の業務の見直しも行なえる。無駄なルーティンはないか、属人化してしている作業はないか…洗い出し、明確化することで、業務全体が見えてくることから、会社全体の無駄を省き、属人化した業務の脆弱性を改善すると同時に、業務の効率化を図れる。業務の標準化が望める上、社員にとっても業務の俯瞰ができることから、モチベーションアップも期待できる。
棚卸しと並行して、BCPの作成も開始される。
業務を優先度から区分し、それぞれに復旧の期限であるマイルストーンを決め、最終的に、復旧手順を時系列で1枚の表にまとめたBCP Time Tableへと落とし込む。
近年は自然災害も多く、新型コロナに代表される感染症への懸念もあり、BCPの必要性がますます増している。スイカンの仕事は、災害時にも途絶えてはいけない大切な仕事であり、社会にも貢献できるものであるということが、今回の策定でより明確になった。
BCPを全社員に浸透させていくためにも、机上訓練から始め、書いてある通りの行動が本当にできるのか、抜けていることはないか、不合理な手順が含まれていないか…訓練ごとに精査していくことで、現場に沿った本当に使える計画書に育てていきたいと考えている。繰り返し見直しを行うことで、リスクに強い会社へと成長を続けたい。