明和株式会社は、『手延麺の新しい価値の創造』を追求することを経営理念に掲げ、こだわりの麺を開発・製造・販売している。兵庫県中小企業団体中央会(中央会)の支援をいかに利用されているのか、代表取締役の魚田氏に話を伺った。
同社はマッチ製造業者として創業した。マッチ産業は播州に根付いてきた地場産業だが、オイルショック後需要が減り続けていた。そこで、創業者は異分野の製造業へと転身を図る。1976年のことだ。目をつけたのは、大手が参入しづらい手延べ麺だった。製麺もまた播州の地場産業であり、長く蓄積されたノウハウがある。付加価値をつけるために工夫し、製法や保存法の研究を重ねた結果、見事にイノベーションに成功した。
(一社)日本燐寸工業会からの紹介で、中央会が組合や団体だけではなく、個々の企業の支援も行っていることを知った。それからは、専門家派遣の制度を利用するなどして「経営革新計画承認企業」、「活路開拓実現化事業」に採択された。
そうして開発した半生パスタは、神戸の老舗パスタ店での取り扱いが決まった。麺のよさを評価して選んでくれたことに自信を深める。販路拡大への試みとして、店で調理して供する以外にも店舗名を冠したOEM商品として販売する。製麺機でつくった麺とは一線を画する品質での勝負だ。
半生で長期間保存できる独自の製法、兵庫県産の小麦を使ったうどんや貴重な韃靼種のそば…麺について語る氏の言葉は途切れることがない。大量生産の麺との違いを分かってもらうには、実際に食べてもらうことだと言い切る。
麺類は、どんな食材、調理法にもマッチするフレキシブルな素材だ。その強みを伝えることができれば必ず海外でも受け入れられると考える。一方、和食がユネスコ世界遺産に登録され注目を浴びる中、まちがった日本食が広がる危険性もあると警鐘を鳴らす。正しく伝えることに使命を感じている。
中国上海ではすでに販売を開始している。ただ高価なだけではない優れた品質を実感してもらうためのストーリー作りも欠かせない。
ハワイの人気店との取り引きも始まろうとしている。店の料理人が在ホノルル日本国総領事館でふるまわれた同社の麺に魅了されての引き合いだ。
商習慣や国民性の違いなどもあり、海外での販売には課題が多い。中央会もまだまだ支援のし甲斐がありそうだ。