黒木テック株式会社は、安全・安心・感動をキーワードに、70年にわたり遊園地の乗り物を作られている。創業者でもある先代の社長は、現社長のお父上で、車の板金技術の腕が認められて遊園地の遊具を作り始められたそうだ。現社長の次には息子さんたち、3世代にわたり、皆さんが、誇りをもった楽しいモノづくりでつながっている。どんなふうに楽しいものを生み出していらっしゃるのだろう?代表取締役の黒木侯次さん、息子さんで設計担当取締役の黒木康平さんにお話をうかがった。
高度成長時代には、人にも社会にもほとばしるエネルギーがあり、日本は活気にあふれていた。各地に遊園地が建設され、子どもたちの夢を乗せた乗り物がどんどん導入された。バブル期が訪れ、さらに規模を増した遊園地やテーマパークが建設され、遊園地業界は大変忙しい時代を過ごしていた。一転バブルが崩壊すると、乱立した施設は軒並み閉園に追い込まれ、業界全体が試練の時を迎える。それ以来、日本の経済は低迷を続け、未だ回復の兆しが見えてこない。
生き残った遊園地も、不景気と度重なる災害の影響を受けて実績が伸ばせない。大手の遊園地にお客さんが集中する現象も起きている。遊園地が儲からないと設備投資が行なわれない。お客さんが乗ってくれないと、メンテナンスや修理にお金がかけられない。当然設備投資も行えない…と悪循環となってしまう。
待っていても以前のように注文は来ない。それならば、この苦難の多い新しい時代に合った、新しい遊具を開発しよう。当社は、試行錯誤を重ね、これまで培った技術と経験、そしてチームワークで新しい遊具づくりに乗り出した。通常であれば、考案した遊具は、それが合いそうな施設へアイデア段階で持ち込み、受注後の制作となる。だが、今回は受注なしでサンプルを作ってみることにした。
そうして、康平さんが考案、設計した移動式の「ウォーターショット」の試作が完成を見た。持ち運べることが画期的な遊具ができあがる。最初は、つきあいのある遊園地に、売る以外の方法で使ってもらうことを考えた。でも、小型で場所を取らないことから、デパートやイベントスペース、スパーマーケットなどもターゲットになることに気づく。ただ、BtoBでの販売しか経験がないため、営業のルートがない。
そんなとき、ちょうど中央会の中橋と顔をあわせ、この話をしたところ、設置場所に当てがあるという。そこからは、とんとん拍子に話が進み、氷上町の「丹波ゆめタウン」でお披露目できることになった。
少し寒い時期だったのにもかかわらず反応は上々で、たくさんの子どもたちが楽しそうに遊んでくれた。移動式の遊具に手ごたえを感じた。
展示会の出展先で知り合ってから、「経営革新計画策定等支援事業」、「ひょうご中小企業技術・経営力評価制度」で支援を受けたのをはじめ、中央会が主催するIT関連のセミナーやイベントをよく利用してきた。だが、今回のような支援を受けたのは初めてで、中央会のスローガン『「動く」「つなぐ」「結ぶ」で中小企業をサポート』を実感。多くの会員を抱える中央会のリソースに改めて気づかされた。もっと気軽に分かりやすく会員同士がつながれる方法があればありがたいと思っている。そして、今まさに新しい出会い、楽しいことを募集中だそうです。