株式会社オキフーズは、明治40年淡路島にて創業。地元の原材料を用いた地域性の強い商品づくりをモットーとして、練物製品全般を製造販売している。島内に独自の配送網を持ち、工場からの直接納品が強みだ。
兵庫県中小企業団体中央会(中央会)主催の「ITでプロモーション大会2015」において優秀賞を受賞した。その取り組みについて代表取締役の沖氏に話を伺った。
沖氏は、以前から取引のあった同じ淡路島のプロモーション大会参加経験者から大会への参加を強く勧められた。それまで行なってきた情報発信と言えば、業者任せのホームページがあるのみで、facebookは個人的に利用しているだけの状態だった。
島内では歴史ある有名店で、地の利を生かした配送体制のおかげで自社商品は多く流通していた。4代目を継いだ氏も、順調な経営状態のもと既存客を大事にすること専一に励んできた。
大会参加を決めてから、セミナーに参加し、専門家派遣による指導を受けた。参加者間の交流も始まった。大会を通じて出会った人たちは、広い視野を持ち、勉強熱心でとてつもなくエネルギッシュに見えた。事業の規模や形態、実践者の年齢や立場に左右されない高いモチベーションを目の当たりにして、現状維持に満足していることに疑問が湧いた。
5年後10年後にどんな会社にしたいのか、明確なビジョンを定める必要があると考えた。もっと長いスパンで経営を見直す必要がある。彼らから受けた刺激で、先を見据えた経営、生き方を強く意識できるようになったと語る。
B to B主体の同社だが、B to Cにも目を向け、会社と直営店、それぞれのfacebookページを立ち上げた。直営店の改装も行なった。大会の審査員でセミナー講師も務めた道端氏からは、SNSだけではなく、店舗運営についても客観的な指導を受けることができた。その出会いをチャンスと捉え、アドバイスを受けての決断に迷いはなかった。古い蒲鉾屋さんはデザイナーの手を借りて大きくイメージを変えた。知り合いからは驚きの反応が返ってきた。だが、ひと目で何を商っているかが分かる店舗となり、店の前で入店を戸惑う人が確実に減ったと言う。
情報発信を競う大会であるが、目的は情報発信ではない。参加者が経営面でどれだけ実績を残せるか、活性化できるかが勝負だと考える。自らも積極的には行なってこなかった営業にも出るようになった。
淡路島の蒲鉾屋としてできること、淡路島の蒲鉾屋にしかできないことについて明確に意識するようになった。
課題は、以前から懸案の地物の生魚を使った練物の商品化だ。周囲からの要望も高い。『経営革新計画』の承認を受け、『ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金』にも採択された。道具と環境の準備は整いつつある。
現在は、既存得意先に協力してもらいながらの試作品づくりの段階である。通常、練物は冷凍すり身から作られる。これを生魚から作るとなると、50年近くも行なわれていないとのことだ。製造法の確立、販売ルートの確保も1からの挑戦となる。開発には長年を要するかもしれない。いつになったらできるという保証はない。しかし、成功すれば他には絶対に真似できない自信がある。「これは自分にしかできない仕事」と笑顔で言い切った。