あわじ里山プロジェクトは、淡路島の放置竹林問題に取り組むべく活動されている。春の到来をいち早く知らせるタケノコや、生活の場で利用されてきた竹製品の数々。孟宗竹は、主にタケノコ収穫の目的で栽培されてきた。それが今、日本中で増え続け、雑木林の枯死をもたらすという。生産者の高齢化と共に、プラスチック製品の台頭や安い海外産品の増加が、竹林の放置に拍車をかけている。このたび、同プロジェクトでは「あわじ島ちく」という「メンマ」を塩のみを使い完全無添加で商品化された。メンマの国産率は、なんと1%だという。それぞれの得意分野を活かし、活動されている高木さん、辻さん、武田さんに話を伺った。
代表を務める高木さんは、洲本市の地域おこし協力隊として活動していたときから、アクセサリーや日用品作りなど竹の有効活用に取り組んできた。その中で、同じ竹林問題解決の一助として福岡県の「糸島コミュニティ事業研究会」がメンマづくりを提案されているのを知り、勉強会に参加。メンマづくりに取り組む様子をSNSで発信していた。
広報を担当する辻さんは、ご主人が里山整備に携わられている関係もあり、放置竹林問題にも興味をもっていた。ていねいな田舎暮らしを志し、切ることが中心の里山整備で出る間伐材の有効利用を実践。木材を薪ストーブの燃料として使ったり、竹炭を自家菜園の土壌改良に使ったり、と家庭レベルでできることから取り組んでいた。
高木さんのメンマづくりの発信を見た辻さんは、「味噌や梅干をつくるように」自家製のメンマづくりを始め、さらにSNSで発信。それを目にしたのが、地元で水産加工業を営む武田さんだった。
増えた竹林は山を覆い、広葉樹林が育たなくなる。山は活力を失い、海へ栄養をもたらさなくなる。結果、魚に栄養が届かないという悪循環を生む。漁獲量減少にも関わる問題だ。人手の入らない竹林には鹿や猪が住み着き、農作物への獣害も顕在化している。淡路では、いかなご漁が盛んで、それを加工する水産業者も多い。武田さんは、幼竹でメンマが作れることは以前から知っていたが、淡路島でやり始めた人がいる!とすぐに合流。早春のいかなご漁を受けての加工作業が終わるころ、収穫期を迎える幼竹を自らの設備を使って加工することを提案。
パズルが嵌るようにプロジェクトが動き始め、構想から約3年、2020年、商品化へ漕ぎつける。
商品ができれば次は世に出す番だ。以前から中央会を活用している武田さんの紹介で、中央会主催の「プレスリリースセミナー」に参加することに。報道機関に向けて、商品やサービスの情報を提供するための戦略を一から学んだ。その後、参加者の中から8社が選ばれ、合同記者発表会が開催される。参加者のほとんどが初めての記者会見とあって、プレゼン内容の洗い出し、原稿作成、伝わる話し方…と、入念に確認しながらカメラリハーサルを経て本番まで、トータルにサポートが受けられる。原稿を書く中で、活動そのものについても再認識することができた。
会場で記者を招いて行われる発表会では、コロナ禍であり、初のYouTube生配信も行われた。「あわじ島ちく」のプレゼンは、目標がはっきりしていて、地域性、ストーリー性もあることから高評価を得た。慣れないプレゼンに最初は緊張したが、8社合同の参加者仲間がいたことや、入念な打ち合わせや練習ができたことで、本番は落ち着いて乗り切れたという。
お留守番中の子どもたちや、遠方に住む友人など、生配信という形を取ったことで、反響を身近に感じることができた。Youtubeに動画として保存されているので、いつでも見てもらえるし、自身でも見返すことができるのもありがたい。
初年度の商品は好評のうちに完売した。国産無添加で安全安心、環境保護にも寄与できて、しかもおいしい。時代の求める商品に育った島ちくをまずは淡路島で、そして同じ問題を抱える日本全国へ広めるのが夢だ。春には幼竹を収穫し、よい幼竹を収穫するため、秋冬の間に竹を伐採したり土を掘り返したり、と竹林を整備する。大変な作業だが、多くの人たちの協力を得て、プロジェクトは進行している。環境問題はボランティアで取り組まれている部分も多く、個人への依存が否めない。島ちくの製造販売が事業として成り立てば、放置竹林問題だけでなく、携わる人たちにとっても活路が開ける。地域おこしにもつながる。今後は、事業化についても中央会へ相談しつつ進める予定だ。
活動は話題を呼び、メディアからの取材も多い。でも、さらに多くの人に関心をもってもらうため、SNSも活用しながら自分たちの声で発信を続けている。竹林から届けるオンライン勉強会を開いたり、島内の子どもたちを招いてワークショップを開いたり。レシピも次々に考案して発表している。これもまた、多くの協力者があってのこと。「山から海へ・次世代へ」をスローガンに、かつて私たちの生活に密着していた里山を取り戻す、未来の子どもたちへとつなぐプロジェクトから目が離せない。
あわじ島ちく販売サイト(base内) https://awaji310yama.thebase.in/