HBSM情報交流会は、兵庫県に拠点を置き「異業種交流」というジャンルで中央会に所属されている。「人の交流」すなわち「情報の交流」をスローガンに、会員数900者を抱える。
決まった活動は、年2回の大会議。あとは制約を設けず、必要となった時に必要な人が集まる。入会金や固定会費は集めず、都度必要経費を集金して活動し、残金は全てボランティア活動に寄付をするという形をとっている。結成7年を過ぎ、異業種交流会は数多あるが、母体となる団体等を持たず独立して存在する会としては、他に類を見ない大きな組織に育っている。代表の宮坂惠太さんにお話をうかがった。
会の前身は、宮坂さんの師である花田雅樹さんを囲む勉強会だった。花田先生に背中を押される形で、宮坂さんが代表となり、当会は生まれた。
あえて会費を集めないという運営方針は、人と情報という形のないものが会の財産であり、運営でお金を得ることが目的ではないからだ。会がスムーズに運営できているのも、その毅然とした姿勢が果たすところが大きい。参加者が実際の費用を分担して活動するため、会費の利用についての不公平も生まれず、制約を受けずに動けるのだ。
もちろん、HBSM情報交流会でも、いわゆるビジネスマッチングが盛んに行なわれている。
Aさんが何かをやりたいと思って、プロジェクトを立ち上げたとする。そんなとき、どんな人でも必ず足りない部分、誰かの手を借りたい部分が存在する。そうすると、メンバーの中に、その足りない部分が得意なBさんが居て、それなら任せろと応援に動いてくれる。Bさんにとっては小さな応援だったとしても、Aさんからすれば、自分にはできない部分であり、自分の力を超えたところでプロジェクトが動いたことになる。その感謝の気持ちをもって、次は自分も誰かのために動きたいと願う。この応援と感謝とお礼の好循環こそが異業種交流の醍醐味だろう。
当たり前のことだが、まず本業の仕事があって、その残りの余力の部分で応援をしてもらうことが基本だ。そして、それをコーディネートする宮坂さんは、自分の意見を押し付けないように、先回りしないように、その人の気持ちに寄り添いながら、あとは自分で考えて決めてもらう余地をつくる。
会は、誰もが知っているような大企業の代表者から、起業間もない若い個人事業主まで、業種、年齢、立場も様々な人たちの集合体だ。共通点は、ひとりひとりが、宮坂さんと1対1の関係で交流しているところだ。宮坂さんは、何度も会って話をするうちにその人のことを理解し、得意分野や困っていることなどを記憶にとどめ、次に誰かが何かを必要としたときのために備える。いわば巨大な人脈のデータベースを頭の中に構築している。超人的なパワーが必要な作業だろうが、こともなげに言う。「目の前に来た人には、丁寧に接して、できることを精いっぱいやる。」家業に携わるも、自身は次男だから余裕があった。その余裕のおかげで、HBSMで並外れたコミュニケーション能力が発揮されることとなった。
facebookやtwitterなどのSNSで入会を募ることはしない。実際に出逢った人に声を掛けたり、紹介や推薦があったり、本人が入会を希望されたりと、自然な形で会員を増やしてきた。
会としての目標なども掲げていない。時間経過とともにぶれたりすることが多いからだ。目標は定めていないが、会員同士の交流を深める機会を用意し、それぞれの学びの場となるための材料はいつも提供できるように努めている。
小さな応援は、大きな潮流となって、地域活性や社会貢献へとつながっていく。ひとりでは成し得ない結果を生む。応援を喜んでくれた団体等から感謝状をいただくことも多いそうだ。
ダウン症の子どもたちと一緒に歩く「バディーウォーク関西」では、しあわせの村をゴールとするお膳立てをしたり、ラジオ関西に後援をしてもらったり、神戸電鉄の駅にポスターを掲示してもらったりと、何人かの会員の協力でイベントを応援した。もともと、2,000人もの人たちが一堂に会して歩くというすごいパワーのある大会を、ちょっと手伝わせてもらっただけと謙虚だが、小さな応援を積み重ねて社会貢献に結びつけた良い例だろう。
発足当初から、集めた会費が余った時には、学生が運営する「にしのみやこども食堂」をはじめ、会に関係するボランティア活動へ寄付をすることにしている。合わせて、会員に募って持ち寄ってもらった物品などを寄付するそうだ。
今年は「第1回愛ボッチャ大会 in KOBE」の開催にも一役買った。ボッチャはパラリンピックの正式種目で、障害の有無・年齢・性別・国籍を問わず誰でも参加でき、あらゆる人とコミュニケーションがとれるスポーツだそうだ。小学校の授業に取り入れようとする動きもある。
イベントや地域活動などの協力で気を付けていることは、自分が部外者であることを忘れないことだ。求められているものはそれ以上にして渡すが、意見を押し付けたりはしない。中に入り込みすぎず、少し離れたところから客観的に関わるというスタンスを貫いている。
兵庫県の異業種交流活性化事業において、中央会の支援を得た。会員の提供するサービス「みやげっと」のシステムをプラットフォームとし、兵庫の特産品をウェブカタログから選べるシステムを事業化した。担当の今橋は、会のスタイルを理解し、適切な情報をもたらしてくれる。
中央会には、引き続き行政機関としての強みを生かした支援を期待する。何かを継続することは、ストレスを伴う営みであり、やめる方へ傾いてしまうことも多い。そんな時、話を聞いたり、声を掛けたり、同じ方向を見たりすることが、がんばっている人たちに継続するためのエネルギーをもたらす、そんな影響力を感じて発揮してほしいとエールが送られた。