清水木工所は、靴の町で有名な神戸市長田区にてグレーディングを専門に多くの靴づくりに関わって来られた。グレーディングとは、必要なサイズに応じて、型を拡大したり、縮小したりすること。靴を作る上で無くてはならない工程だ。
代表の清水さんは、グレーディング一筋の職人として高い技術と汎用力でどんな注文にも応えるスペシャリストだ。旧来は、サイズごとに作成したパターンから金属製の抜き型を作ってカットする方法が採られてきた。清水さんは、CADやCAMを使ってグレーディングパターンをデータ化し、コンピュータによる自動裁断を行う方法で業界の最先端を誇る。
市場には安い大量生産品があふれているが、反面、一人一人に合わせた履きやすい靴、好みに合わせたオーダーメードの靴を求める層が増えているのが実感される。それはメーカーからのオーダーにも表れており、同じデザインの靴でも、サイズや幅だけでなく、ヒールの高さ、履き口のサイズなどにもバリエーションを持たせたものもあるという。
コンピュータソフトを利用しての裁断では、抜き型が不要なため、余計なコストもかからず、納期も短くてすむ。おまけに切断面もきれいで、複雑なカッティングもお手のもの。ご家族で協力し合い、ものづくり補助金を利用してイタリア製のカッティングマシンを導入した。グレーディングから裁断までを一括して受注できる体制が整った。
機械も技術もある。もっと知ってもらおう!と、展示会出展を考えていたとき、中央会のホームページで支援事業として展示会の共同出展が告知されているのが目に留まる。東京のギフトショーに出られる!と応募を決めると、出展の条件として「経営力向上計画」の策定を求められた。
複雑なグレーディング作業の技術や経験をデータ化し、海外製のソフトと機械を駆使し、裁断までを一括して行う。多様な注文に短納期で対応できる。職人としてのノウハウとITが見事に融合されている。
経営力向上計画策定に向けて中央会とやり取りする中で、これを当たり前にやっているということこそが強みだと再発見。強みと想いを洗い出し、認定を得ることができた。参加した展示会でも、来客だけでなく、共同出展した兵庫県下の様々な業種の事業者とも交流でき、よい経験になった。
エコロジーが叫ばれる今、無駄の出る大量生産は時代にそぐわない。個人の生活様式や嗜好も日々多様化している。これからは、靴もオーダーメードが主流となるだろう。足を合わせるのではなく、足に合わせた靴が必要とされている。
時代の要求に応える技術と実績がある。グレーディングに加えて、裁断においてもネスティングという並べ方の技術を自動化したい。培ってきた技術と新しい技術を合わせることで必ずや靴業界に貢献できると考えている。
美早さんは清水木工所のすぐ近くで工房兼お店を開かれている。洋服、靴、バッグ、小物とデザインから制作、販売まですべてを自身でこなす。専門学校で服飾や靴づくりを学び、メーカーでの勤務を経てオリジナルブランドを立ち上げた。地域とのつながりを深め、役立つことをしたいと、中央会の支援で小規模事業者持続化補助金を申請。見事採択され、ワークショップを開くなど積極的に活動している。お客さんとの一対一の対話や付き合いの中で満足してもらえるものを届けていきたいという。靴も一足一足の手作りオーダーメードが中心だが、今後は父上の技術を活かした展開も楽しみだ。
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