灘菊酒造株式会社は、姫路にて創業100年を超える老舗の酒蔵だ。「地元の米・蔵の地下水・地元の人で醸す」ことにこだわり、酒造りをしている。兵庫県中小企業団体中央会(中央会)との関わりについて、杜氏として蔵元を束ねる川石氏に話を伺った。
酒蔵見学や酒蔵レストランで集客し、直に商品を買ってもらうというユニークな販売形態をとっている同社では、個人客とのつながりが欠かせない。ホームページ業者の勧めもあり、平成25年7月facebookを立ち上げた。立ち上げたものの、有効な発信方法が分からず手探りの日々だった。
そんなとき、中央会主催の「Facebookでプロモーション大会2013」をネット上で偶然知り、思い切って参加することに。専門家の指導の下、参加者同士の横のつながりも得られ、1ヶ月間の会期を通し楽しく情報発信できた。業種も規模も様々な事業を営む参加者仲間は、中央会ならではのユニークさだ。彼らとの交流で見聞も広がり、業界内での常識だけにとらわれない考え方も学んだ。
努力と成果が認められ、結果は最優秀賞を受賞。大会授賞式は中央会の活動を総括する年次大会と同時開催されており、中小企業支援の数々を知ることとなる。
思いはあったものの、具体化できずに居た。商品開発資金として使える「ものづくり補助金」の存在を聞き、中央会に相談。支援が始まった。
補助金採択を得るために、まずは商品開発ができる環境を整えねばならない。第一歩として発展のためのアクションプランを作る「経営革新計画」へのチャレンジを勧められた。指導を受けながら申請書類を作成するうち、明文化することの大切さを実感した。すべてが整理され、はっきりしていく。経営の基本方針についても、社長である父親と話し合う良い機会となった。具体的な目標や数字の話もできた。第三者の目で見て支援してもらえるのがありがたかった。そうして、翌平成26年1月、経営革新計画承認企業として県知事に承認された。
経営革新に採択されると、その後は驚くほどスムーズに進んだ。目標が明確になると、次に何をすべきかが自ずと見える。商品開発に必要な設備投資には「ものづくり補助金」が利用できた。商品開発の次は販路の確保だ。中央会独自事業の「活路開拓実現化事業」がぴったりだった。「相談しなければ、夢に終わったかもしれない」新製品の発売まで、もうあと一息だ。
経営革新計画から補助金申請へと進む中、得られたのは補助金だけではないと気づいた。歴史ある酒蔵が、経営面でも新たな一歩を刻んだ。
免税対象の拡大など、国が外国人旅行者受け入れに力を入れている。まもなく姫路城の保存修理事業も完了する。日本の食にも注目が集まる中、同社でも外国人旅行者受け入れ体制を整えたいと考えている。海外へ向けての発信も行いたい。では、何から手を付けたらよいのか?接客の問題、メニューやパンフレット…中央会に相談しながら、グローバル化に向けてすでに動きは始まっている。